「今年の夏こそエアコンを買い替えよう」――そう考える方は多いのではないでしょうか。
正直に申し上げると、エアコンの機種選びはプロの目線でも難しいです。
難しいと感じる理由の一つが、夏の平均気温の変化です。実は、ここ20年で日本の夏の平均気温は地域によっては約3℃前後上昇しています。設置から5年前後しか経っていないのに、効きが悪くなったという相談も増えてきました。真夏の日中には室内の温度が35℃近くまで上がることもあり、扇風機だけでは対応できなくなっています。
もう一つの理由は、住宅環境の変化です。昔は断熱性の低い木造住宅が多かったため、能力不足で非効率な運転になりやすかったのです。
今では、エアコンはもはや「快適に過ごすための家電」ではなく、体調や命を守るための必需品です。特に高齢者や小さな子どものいる家庭では、数日間エアコンが使えないだけで体調を崩すリスクがあります。
しかし、いざ購入しても「畳数の選び方を間違えた」「追加工事が必要で予算をオーバーした」「取り付けが一発で終わらず日延べになった」といったトラブルは後を絶ちません。
そこで本記事では、現役の家電販売員としての経験と、各メーカー・主要家電量販店の公開情報をもとに、エアコンの正しい選び方(畳数・グレード・メーカー)、設置工事でかかる追加費用の目安、工事が一発で終わらない典型的なケースとその回避方法の3つを柱に、購入前に知っておくべき知識をまとめます。
エアコンを選ぶとき、まず目に入るのが「6畳用」「12畳用」といった対応畳数の表記です。
しかし、この基準はもともと断熱性の低い1960–70年代基準の住宅を想定して算出されたもので、現代の住宅事情にはそのまま当てはまりません。
近年の新築住宅やリフォーム済み住宅は断熱性能・気密性能が飛躍的に向上しており、表示どおり、あるいは少し小さめの機種でも十分効率的に冷暖房できる場合もあります。
その一方で忘れてはいけないのが、気候の変化です。気象庁のデータによれば、この20年間で日本の夏の平均気温は場所によっては約3℃前後上昇しました。昔は『6畳の部屋に6畳用で十分』だったとしても、真夏の外気温が高くなった現在では冷房能力が足りず、室温が下がりにくいと感じることが増えています。
理由としては、住宅もエアコンも昔に比べ、技術が進化しています。従来のエアコンはON/OFF制御が中心で、設定温度に達すると停止し、室温が上がるとフル稼働する仕組みでした。住宅も断熱性が低く、室温を保持できませんでした。
そのため能力が大きすぎる機種を選ぶと「短時間で冷えすぎて止まる → 断熱性が低く、すぐ暑くなって再びフル稼働」という短サイクル運転になり、非効率でした。エアコンはフル稼働時に電力消費が多くなる為、フル稼働の時間をいかに減らすかが省エネに直結します。今のエアコンはインバーター制御によって出力を細かく調整し、弱運転で室温を一定に保つことが可能になり、省エネ性能が向上しています。
そのため、多少大きめの機種を選んでも「能力過多で非効率」になりにくく、安定した運転ができるようになっています。この先の10年を考えたときに、今よりさらに夏の平均気温が高くなる可能性を考えると、少し強めのエアコンを選んでおいた方が安心感があります。
⚠️ また、安さを優先するあまり「10畳の部屋だけど6畳用で十分」といったように、本来必要な能力より小さい機種を選ぼうとされるお客様もいます。しかし能力不足のエアコンでは、結局冷えにくく不満やトラブルにつながりやすいのが実情です。実際に家電量販店では、後々のクレームを避けるため、明らかに能力が不足している機種の場合は現場で設置をお断りする場合があります。
エアコンには価格帯ごとに大きな違いがあります。
冷暖房の基本機能のみ。フィルターの自動掃除機能も無く、シンプルなモデル。寝室や個室など、長時間の使用が少ない部屋や、夜間のみ使用する部屋用に選ばれることが多い。
フィルターの自動清掃機能が付く機種が多い。省エネ性能はエントリーモデルとさほど変わらない。メーカーによって特徴の方向性が異なる。
暖房性能が大きく向上しており、寒冷地でも安心して使える。
省エネ性能も高いため、冷房も暖房もエアコンでまかなう家庭なら、長く使えば電気代の差で購入費用を取り戻せる。
メーカーごとに違いはあるが、快適性(気流制御や温度調整)や清潔性(自動掃除・防カビ機能など)がさらに充実している。
短期的な価格よりも、10年間の電気代と快適さを考えれば「ハイエンドモデル」を選ぶメリットは大きいです。
各メーカーにはそれぞれ独自の強みがありますが、大切なのは自分や家族の暮らし方に合ったエアコンを選ぶことです。種類が非常に多いため、家電量販店で販売員のアドバイスを聞くのも有効です。
⚠️ 注意:メーカーから派遣されている販売スタッフは自社製品を強く勧めることが多いため、話を聞く際はその点も踏まえて判断しましょう。
エアコンは「本体価格」だけで選んでしまうと、後から思わぬ出費に直面することがあります。実際に量販店の現場でも「広告の値段だけで決めたけれど、工事当日に数万円追加された」という声は珍しくありません。これは、エアコンの取り付けには標準工事の他に追加工事が発生する可能性があるからです。
ここでは、主要家電量販店の公式情報をもとに、追加費用の目安を整理しました。購入前に把握しておくことで、「知らなかったせいで損をした気分になった」という後悔を防げます。
一般的に、標準工事費には以下が含まれます。
| 店舗・業者 | 2.2〜2.8kW (6〜10畳) |
3.6〜4.0kW (12〜14畳) |
5.6kW (18畳) |
6.3kW〜 (20畳以上) |
|---|---|---|---|---|
| エディオン | 15,400円 | 17,600円 | 22,000円 | 22,000円 |
| ケーズデンキ | 16,500円 | 16,500円 | 22,000円 | 22,000円 |
| コジマ×ビックカメラ | 15,400円 | 19,800円 | 22,000円 | 22,000円 |
| ノジマデンキ | 18,150円 | 19,800円 | 21,450円 | 21,450円 |
| ヤマダデンキ | 16,500円 | 16,500円 | 22,000円 | 22,000円 |
| ヨドバシカメラ | 10,780円 | 15,950円 | 15,950円 | 15,950円 |
| エアコン本舗 | 25,300円 | 25,300円 | 27,500円 | 27,500円 |
| その他ネット業者 | 12,000〜18,000円 | 15,000〜21,000円 | 20,000〜30,000円 | 20,000〜30,000円 |
延長:1mごとに 2,500〜4,000円。
2階から1階へ配管を立ち下ろす場合などは必須。
配管を美しく見せ、紫外線劣化を防ぐため希望されるケースが多い。
分電盤自体の交換が必要なら3万円以上。
2階の外壁や屋根に室外機を設置する場合、安全確保のために追加費用が発生します。
目安:3,000〜22,000円
2006年9月以前に着工の建物で配管穴を新設する際や不随工事で穴あけが必要になる場合、石綿(アスベスト)含有調査が義務付けられました。設計図書等から、石綿が含有していない事が証明できない場合、みなし工事(石綿があるものとして)を行います。
目安:調査・石綿対策工事で1万円以上かかる場合も
エアコンの設置環境はお住まいの住宅によって大きく変わる為、店舗での把握には限界があります。そのため、お伺いの当日に追加の工事が必要となる場合があります。
💡 「追加費用の可能性」を頭に入れておくことで、当日のトラブルの回避に繋がります。
当日の追加工事が不安な方は、事前見積もりを活用するとよいでしょう。
エアコンを購入したのに「今日は工事できません」「後日あらためて伺います」と言われるのは、もっとも避けたい状況です。特に真夏の猛暑日なら、その数日間をエアコンなしで過ごすのはとてもつらく、健康面にも悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは、現場で実際によく起こる「日延べの原因」を整理し、どこまでが当日対応可能で、どんな条件で後日に回されるのかを解説します。
分電盤からそのエアコンだけに電気を供給する「専用回路」を指します。
エアコンは起動時に大きな電流を必要とするため、共用するとブレーカーが頻繁に落ちたり、最悪の場合は発熱・火災のリスクになります。メーカーも取扱説明書で「必ず専用回路を使用」と明記しています。
分電盤に空きがあり、ブレーカー容量が問題ない場合、専用回路の増設・配線工事は即日施工可能です。
一般的な隠蔽配線(天井裏や軒下を通す配線)や屋外配線(外壁に沿って保護管を使う配線)は、現地の状況が良ければ当日そのまま施工できます。
ベランダや庭などに十分なスペースがあれば、当日設置に支障はありません。
しかし問題となるのは、設置スペースが狭い場合です。
室外機は冷房時に大量の熱風を排出するため、背面・左右・前方に一定の空間が必要です。
背面5cm以上・左右10cm以上・正面1m以上の空間を確保するのが推奨されています。
狭すぎると冷却効率が落ち、最悪の場合は故障の原因になります。
また、室外機は運転中に微振動を起こすため、壁や手すりに密着していると「ゴーッ」という共振音が響き、騒音トラブルにつながります。
必要な部材が当日欠品している場合は日延べになることもあります。
繁忙期には化粧カバーや壁面金具、二段置き台などの部材が欠品することがあります。
エアコン本体の入荷遅延もあり、結果的に工事が後日へ回されることがあります。
💡 購入前に、建物構造・分電盤の状態・設置場所の希望・管理規約を販売員に伝えることで、多くのトラブルは回避できます。
ここまで、エアコン選びから工事費用、そして日延べになる典型的なケースまでを整理してきました。最後に、改めて大切なポイントをまとめます。
最も重要なのは、購入前に販売員へ正確に情報を伝えることです。
これらを伝えておけば、工事当日に「できません」と言われる可能性は大きく減ります。
💡 これらを用意して販売店へ向かうと、スムーズに工事できます。
エアコンは「ただの家電」ではありません。
体調を守り、生活の質を左右する存在です。
購入を検討している方は、
この3つをしっかり店頭で確認することで、購入後の「こんなはずじゃなかった」を防げます。
快適な夏を過ごすために、この記事を参考にエアコン選びを進めてみてください。